ブログ枠ということなので書く。 Scrapbox 個人ではあんま使ってないのでここに書きます。
Scrapbox Drinkupへの参加の感想を1週間後までに書いていただき、インターネットに公開していただけることが条件になる枠です
とあるのがどういうふうに書けとは指示がないのでそのように行なわれるでしょう。各セッションの細かい内容などはイベントの Scrapboxを参照されたし。
これに関して、使っているツールは Slack なのだけど僕が働いている会社でも同じようなことをやっていて大きな成果が出ていると考えている。
サポートチケットそのものとは別の場所にコミュニケーションのための場があるのは極めて良いことであると思う。 Nota 社の取り組みのうちユビレジの取り組みより進んでいると感じたのは、対応用ページの閲覧者が部署の垣根を越えている点で、この点は我々も参考にしなければならないでしょう。
全体の話を聞いていて思ったのがこの点が曖昧であると感じる。 LT 発表者の niryuu さんが「Scrapbox は情報をためる場所」ということを発言したときに非常に強い違和感を覚え、その点について shokai の考えを正したのだけど特にそれを否定するということはなかった。
ここで僕の考えを書いておこうと思う。 Scrapbox のようなツールの目的は明らかに「情報をためる場所」ではない。それは機能の説明であって、目的の説明ではない。例えば銃という道具は「銃弾を発射する道具」であるが、「銃弾を発射するための道具」ではない。その目的は「鳥獣や人間を殺傷する」「競技や娯楽に供する」ことなどであるはずだ。
チームのための新しい共有ノート
と書かれているのだが、これもどちらかといえば機能の説明であって、目的の説明ではない。「チームのためのドキュメンテーションシステムの目的など自明のことだ」と思う人もあるかもしれないが、では「鳥獣や人間を殺傷する」というようにそれを明確に説明できるか。意外とこの点は自明の事実ではない。
「チームの知識が検索可能にすることで効率、生産性を上げる」という目的があることは自明であるが、はたしてそれだけか。
shokai による以下の発言はこの点見るべきものがある。
チャットは結局ターン制で相手が喋ってる間別の話なんてできないから同時に1トピックしか話せないし、互いに言いたい事が3つ4つあってさらに他の情報への参照をたくさん貼りたい時は流れていっちゃうから全然駄目なので、音声会話やチャットなんて使ってるから地球から戦争が減らないんじゃないかと
— Sho Hashimoto (@shokai) March 22, 2017
ここではあきらかに Scrapbox を会話のツールとして用いている。 Google Docs の共同編集で会話のような経験をした人は多いと思うが、同時にマージアルゴリズムの限界から強いストレスを感じたことだろう。 Scrapbox はその点を克服している(とすくなくとも宣伝されている)。上に上げたカスタマーサポートのための取り組みにおいてもやはり Scrapbox は便利な会話ツールとして用いられている。
共同編集とは会話の新しい形態であり、この観点から見たとき Scrapbox の目的は「会話のストレスを軽減しその生産性を上昇させること」となる。この表現はまさに「人間を殺す」と同等のレイヤーにある。
ここでさらに Scrapbox が用意している情報の整理のための機能について考える。上記の商品情報ページには
いつでも整理された状態に
Scrapboxは、リンクとハッシュタグから動的にページ間のつながりを作ります。 つながりができると、関連するトピックが下に表示されるので、アイデアを簡単に整理して探索できるようになります。 タグやページが数年間で数千という量になってもフォルダの構成などに頭を悩ませることはなく、安々と管理できます。
とあるがこれも「銃弾を発射する」である。今回の Drinkup で非常に参考になったのが大滝さんの発表であると思う。これは LT という枠であったが質量共に基調講演と呼ぶに足る発表だったと思う。
最も注目すべきはこの部分である。発表者はあらゆる情報をドキュメントシステムに集約し検索、集計可能な状態とすることで、最も自分が注目しているキーワードに辿り着けたとしている。正直いって、被言及数が多いというだけのキーワードを重要視することに意味があるかいうとそれは違うのではないか、抽象度の高すぎるものについては除外した分析をすべきではないかなどと思うのだが、その点は重要ではない。ここで重要なのは「新しい思想の発見」という目的のために Scrapbox のようなツールを利用可能であるということだと思う。このことから「新しい知識の発見」という目的のためにも Scrapbox を利用することが出来るのは明らかだ。
こうした点はある一定以上の年齢の人にとっては自明のことであるかもしれない。発表者の大滝さんもおそらくはその類いで、梅棹忠夫、川喜田二郎の影響下にある人であれば Scrapbox がそういうツールとして利用可能であることはすぐにわかるはずだ。この点についてsite:scrapbox.io 梅棹忠夫とかで検索してみても意外と指摘が少ない。
Scrapbox ではユーザーを力強い存在とみなしてよいという思想があり、
どう使ってもらいたいかをユーザーに説明していく事が重要
とあるわけだが、この点は実はそこまで重要ではないと僕は思っている。「どういう目的で使用可能なツールであるか」という点について Nota として思想の段階に深めてその点を主張していく必要があるのではないだろうか。
なぜなら Nota は「Scrapbox は新しい概念」と考えているのだから。