この本の内容を簡単にまとめると
というようなことが書かれている。しかしこの本をよくよく読んでみると、アメリカの指導者達は実に見事に国際情勢を評価して正しい戦略を立ててきたことが分かる。
著者は、中国人はアメリカを以下のように評価していると記している。
著者は、これを中国人の被害妄想に過ぎないとする。アメリカは常に自由と正義の為に戦っている国家でこんなことはありえない云々というようなことが書かれている。
が、実際のアメリカがそうでないことは明らかで、アメリカは以下のような政権や勢力を支援してきた
ようするにアメリカには二つの流れが存在している。本書の著者が信じるような、自由と正義の為に戦うアメリカと、冷徹に情勢を評価しアメリカの国家勢力を伸長させようという勢力だ。
結局のところ、理想論を語る勢力と、現実主義の勢力があり、実態としてはリアリズム派が国家統治の主流であるというのは、どこの国も同じなのだろう。村山富市は自衛隊を解散しなかったし、鳩山由紀夫は辺野古移設に回帰したし、アレクシス・ツィプラスはヤニス・ヴァルファキスを更迭してユーロ圏に残留した。
アメリカも、中国も、ようするにそういう普通の国だったということで、著者は理想論に幻惑されて現実を見据えることができなかった。アメリカは理想主義の国家であり、中国はいずれ理想主義が勝つと考えていた。
著者は中国では現実主義が主流であることに気付いた。そしてアメリカの理想をまだ信じており、結果として極端な反中国主義者になってしまった。結局、それだけのことだ。
著者は見落しているが、アメリカは実によく中国の脅威を見抜いているし、また著者もまたその能力を見抜かれている。
ようするにアメリカ政府高官にとって著者は「中国にいいように操られる愚か者だが情報センサーとしては役に立たないこともない」という程度の存在だったのだろう。
ところで、著者は以下のように著している
著者は恐らくパットン将軍やシュワルツコフ将軍が指揮する大戦車軍団の戦いだけを「正面戦争」と考えており、海軍力や空軍力をその補助ぐらいにしか考えていないのだろう。
このあまりにも幼稚な戦争観は実のところアメリカ人によく見られるもので、ミアシャイマー教授などもこの類型に属していると考えてよいのではないかと思っている。
また作者は中国人が歴史と古典を学びそこから偉大な知識を得ていることに驚愕している。このあたりも一般的なアメリカ人の「歴史」観が反映されているのではないだろうか。面白いポイントだ。