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イスラム国の退潮

湯川遥菜さん他一名がイスラム国(武力による現状の変更を支持するのでこの名称を用います)に殺害された結果、日本人が皆イスラム国の機関誌 DABIQ を読むようになりました。

以前からの読者としては非常によいことだと思います。ところでこれを全部読んでる人なら分かることなんですが、イスラム国、非常に危機的な状況にあります。

以下を見ると一目で分かります。

DABIQ 第 2 号の表紙と目次

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DABIQ 第 7 号(最新号)の表紙と目次

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DABIQ 第 2 号の本文

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DABIQ 第 7 号の本文

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見た目で分かるとは思いますが、かなり劣化してます。僕は編集を担当していた人間がイスラム国から離脱したか、戦死したものと考えています。

また内容に関しても、 1 号のころなどは、巻末にド派手なニュースページがあって赫奕たる戦果を紹介していたんですが、最近はそれが無いです。また 7 号では「モサドのスパイがイスラム国に転向したので、インタビューしました」という内容の極めて幼稚で明らかに創作な記事でページを埋めたりしてます。

最新 7 号は量は多いんですがとにかく内容が酷い。

正直この内容で欧米から要員を勧誘することは不可能でしょう。単純に AK-47 を振り回して人を殺す人はチュニジアからいくらでも供給できるのだろうという情勢ですが、無論戦争とはそんな戦闘員だけで出来るものではないです。武器、弾薬、食料、燃料を適切に末端部隊まで届ける物流業務のプロと、戦果と損害を判定し適切なリソースの配分先を決めるオペレーションリサーチの専門家、情報の収集と分析業務の専門家、こういった高度な水準の技術者が重要です。

いくら戦略資源を破壊されたところで、情報のプロと物流のプロとがいれば新しい供給元と供給ルートを敷設できるわけですが、逆に物資だけがあっても物流が分かる人がいないと前線のチュニジア人のところまで届かずに腐ってしまう。

そしてそういった要員は主にイスラム国では旧イラクバアス党員に頼っているわけですが、当然これらは順次戦死していきますから、補給が必要です。そうなると欧米でそれなりの教育を受けた人を引き込まないとやってはおられんわけです。が、先述した通りイスラム国の広報部門は劣化しきっている状態でして、このあたりが今後益々厳しくなっていくものと考えられます。

イスラム国に対して空爆は現在大して戦果を上げておらず、支配地域の 1% ほどしか奪還できていない、などと報じられています。しかしながら空爆によって広報部門というある意味最も重要な人材をイスラム国は喪失した可能性があります。

ミアシャイマーなどは「戦争は陸軍力によってしか決着しない」と述べていましたが、それは「最後の一撃は陸軍力である」という話です。「陸軍力で最後の一撃をぶちこめるようにするために何をするか」が戦争なのであって、その意味でイスラム国は敗北しつつあります。「陸軍力があってもどうにもならない」という状態から「陸軍力さえあれば決着がつく」という状態になりつつあるわけです。

各位、頑張ってください。

追記

いま気付いたんだけど、 DABIQ 7 ってこれで新規に公開された情報ないし、ロゴも違うし、偽書の可能性あるな

— 小池陸@松浦だるま団副団長 (@ssig33) February 13, 2015

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