ジェイムズ・エルロイの作品、特に暗黒のLAシリーズとアンダーワールドUSAシリーズを読む際には一つ気をつけておいたほうがよいことがあります。
暗黒のLAシリーズに関しては脳が足りない人たちが、これは「ノワールの傑作」だとか「緻密なプロットに魅力がある」などという論評をしていますが、この二つのシリーズの本質は
歴史小説
です。「誰でも」知っている歴史上の事実とオリジナルの要素を交え、「あれ実はこうだったのだ」と示すという歴史小説のまさに正道を行く小説です。
ところがここでいう「誰でも」というのは「アメリカ人なら誰でも」という歴史的事実なので、日本人には若干縁遠いものがあります。
ですが、他の歴史小説と同様に、その背景となる歴史を知っているほうが何倍も楽しめることは言うまでもありません。
ということで、LAシリーズとUSAシリーズの背景となる歴史について、これを勉強すれば大丈夫というものを簡単に挙げておこうと思います。
'ブラック・ダリア'
これについては言うまでもありません。ブラック・ダリア事件がモデルです。
事件の大枠だけでなく、ちょっとしたところにも(例えば陸軍伍長を締め上げるところとか)史実を援用したエピソードが使われていますので、実際のブラック・ダリア事件がどのようなもので、どのような報道がなされていたのか、ということを知っておくといいかもしれません。
'ビック・ノーウェア'
ミッキー・コーエン/ジャック・ドラグナなどのLAギャングの抗争の裏面史といったエピソードです。ミッキー・コーエン、ドラグナ犯罪一家、ジョニー・ストンパナートなどは実在の人物で、ミッキーの家が爆破されたというのも史実です。当然ハワード・ヒューズも実在の人物ですねwww
'L.A.コンフィデンシャル'
これはディズニーランド建設の裏面史を書いた作品です。
つまり
レイモンド・ディータリング=ウォルト・ディズニー
ネズミのムーチー=ミッキーマウス
ドリーム-ア-ドリームランド=ディズニーランド
というわけです
ディズニーランドの歴史とこの辺りの相関関係を押えておけば楽しく読めるのではないかと思います。
'ホワイト・ジャズ'
ドジャー・スタジアム建設を巡る暗闘を描いた作品です。
ドジャー・スタジアムについて一通り知っておくのが良いかと思います。
つまり、暗黒のLAシリーズはこれら「アメリカ人なら誰でも知ってる」LAの歴史に、ダドリー・リーアム・スミスという駒を追加してエルロイが独自に作りあげた世界という訳です。
'アンダーワールドUSA'
アメリカン・タブロイドとアメリカン・デストリップは日本人でも誰でも知ってるケネディ一家の裏面史を描いた作品です。
ここで押えておいたほうがいいことは、ケネディ一家はマフィアとの繋りが深く、マフィアを嫌うハワード・ヒューズはその点に不評を抱いていたということと、ハワードによるラスベガス乗っ取りという二つの史実です。
という訳で、エルロイって何か読み辛いんだよなあ、とか思って敬遠してた人はエルロイ作品が歴史小説であることを認識して、歴史を勉強してから読めばかなり楽しめるのではないかと思います。